ツアラーの頂点へ:
ムルティストラーダが切り拓く新境地

多くの人がツアラーに求める様々なエレメント……スポーツ、ツーリング、アーバン、そしてオフロードの「走り」を、1台に集約したモーターサイクル。それが世界で最も販売台数が多いドゥカティのモーターサイクル、ムルティストラーダだ。

 ツーリングは、モーターサイクル趣味の王道だ。そして"ツアラー"とは、ツーリングに適したモーターサイクルのことだ。現代ではカテゴリーの多様化によって、理想的な"ツアラー"とは? という問いに対しては、百人百様の回答が返ってくるだろう。 

 純粋に旅のツールとしての実用性を大事にする人、移動の間も走りを楽しむためにスポーツ性を重視する人、週末のツーリングのためだけでなく街中での普段使いの扱いやすさを考慮する人、そしてオンロードでもオフロードでも走破できるデュアルパーパス性を求める人と、人々が"ツアラー"を選ぶときの視点は実に多様だ。これらの要求をすべて満たすモーターサイクルがあれば、それは究極のツアラーと呼ぶにふさわしい。

“世界”が選んだツアラー、ムルティストラーダ

 2010年に初代モデルが登場したムルティストラーダシリーズは、多くの人がツアラーに求める様々なエレメント……スポーツ、ツーリング、アーバン、そしてオフロードの「走り」を、1台のモーターサイクルに集約した野心作だった。今日に至るまで、ドゥカティのツアラー・カテゴリーとしてラインアップされているムルティストラーダが、実は世界で一番売れているドゥカティであることは、意外と日本のモーターサイクルファンたちには知られていないようだ。

日本だけでなく、世界中の多くのモーターサイクルファンは、パニガーレ・シリーズに代表されるスーパースポーツこそ、ドゥカティというブランドを象徴するカテゴリーとして認知しているだろう。確かにパニガーレ・シリーズは、2019年度に8,304台を販売し、世界の大型スーパースポーツ市場で全体の25%のシェアを占めるほどの人気を博しており、スーパースポーツの雄としてのドゥカティのブランドイメージを牽引している。 

 一方で、最もドゥカティの売り上げに貢献しているのは、ツアラーであるムルティストラーダ・シリーズに他ならない。2019年、世界中で販売された5万3,183台のドゥカティの内、最も多くの台数を売り上げたのは、ツアラーのムルティストラーダ・シリーズだった。シリーズ合計の販売台数は12,160台と全体の1/4弱を占めており、この数字はいかにムルティストラーダ・シリーズが、ドゥカティ車が販売されている世界90ヶ国のユーザーたちから、熱烈に支持されているかを示すものだ。そして、昔からのドゥカティファンというカテゴライズには収まらない人々の多くが、ツアラーとしてのムルティストラーダの魅力を理解しているという事実が、この販売成績には現れているのだろう。

電子制御が具現化した、万能ツアラーとしてのハイパフォーマンス

 ムルティストラーダ950系と1260系は、近年流行の大型"アドベンチャーバイク"に分類されることが多い。オンロードでもオフロードでも高い走破性を示し、快適に長距離ツーリングをこなすための装備の数々を有するムルティストラーダ・シリーズは、確かに優れた大型アドベンチャーバイクとしての特性も有している。しかし、ムルティストラーダ・シリーズは単なる大型アドベンチャーバイクという分類には収まらないモーターサイクルでもある。

スポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロという4種類のカテゴリーの特性を、1台に集約する……"4 bikes in 1"というコンセプトで生み出されたムルティストラーダは、スイッチ操作で切替できる4つのライディングモードを選択するだけで、それぞれのモードに最適なエンジン特性、サスペンション設定、そしてトラクションコントロールとABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の介入度を自動で調整することを可能にしている。そして、スポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロという4つの分野のいずれにおいても、各分野の最上級のパフォーマンスを発揮できるように作られているのがムルティストラーダのツアラーとしての万能性の源泉なのだ。

 ムルティストラーダのスポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロという4つのライディングモードでの「極上の走り」を実現する鍵となった技術が、ドゥカティが長年取り組んできた"電子制御"だ。ドゥカティは1980年代、水冷Vツイン・8バルブのスーパーバイク初号機である851の時代からフューエルインジェクション(電子制御燃料噴射)の実用化に取り組んできたが、2008年からはトラクション・コントロールの導入とともに「セーフティ・ロードマップ」を策定。高度な次元での電子制御技術を、モーターサイクルのアクティブ&パッシブ・セーフティに活用し始めている。

 ムルティストラーダの"4 bikes in 1"というコンセプトも、ドゥカティの卓越した電子制御の恩恵によって具現化されている。スイッチ操作で切替できる4つのライディングモード(スポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロ)を選択するだけで、それぞれのモードに最適なエンジン特性、サスペンション設定、そしてトラクションコントロールとABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の介入度を自動で調整することが可能だ。つまり従来は、熟練のライダーとメカニックの作業領域といえた高度なセッティングを、スイッチ操作のみで誰もが簡単に行えるようになったわけである。

 2012年には、セミアクティブ式のDSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)を新たにムルティストラーダ1200Sに導入。ロール、ピッチング、縦加速度、横加速度、垂直加速度を検知し、前後サスペンションの設定を自在にコントロールするDSSは、前後タイヤの圧倒的グリップ感と、「空からフックで吊り上げられたような」コンフォート感あふれる乗り心地をライダーに提供してくれる。さらに進化を遂げた、新世代のサスペンションともいえるDSS EVOは、比類なき安心感とツーリング時の疲労低減効果をライダーとパッセンジャーに与えてくれる。言うまでもなくライディング中の乗員の不安と疲労が減るということは、すなわち旅の安全度を高めてくれることに他ならない。

 アーバンモードではソフトなフィーリングとなり、大型車を気軽に街乗りで扱うことを可能とする。ツーリングモードでは、快適な乗り心地と適度なパワー特性を乗り手に提供。そしてスポーツモードではスーパーバイクのNo.1ブランドであるドゥカティらしさあふれる卓越したワインディングでのパフォーマンスを披露し、エンデューロモードでは大型アドベンチャーバイクならではの走破性の高さを未舗装路にて発揮する。ムルティストラーダの"4 Bikes in 1"コンセプトは、凡庸な4種類のモーターサイクルを1台に融合させるのではなく、それぞれのカテゴリーでトップクラスのクオリティを持つ4種類のモーターサイクルを、高度な電子制御技術により1台に統合しているのだ。

最も美しいツアラーの称号

 モーターサイクルの魅力はもっぱら"走り"の良し悪しで語られるが、オーナーの所有欲を満たすことにつながるデザインとスタイリングの"美しさ"も、モーターサイクルの魅力を考えるときに欠かせない要素だ。

 毎年秋に開催される、世界で最も重要なモーターサイクルショーのひとつであるミラノ国際モーターサイクルショー(EICMA)では、名物企画として毎回来場者及びオンライン投票による「最も美しいバイク」を選出している。2019年で15回目を迎えたこのコンテストで、ドゥカティはその内の10回で1位に選出されている常連ブランドだ。なお2019年は最新のストリートファイターV4が2位以下を大きく引き離し、全体の36.7%の得票率で1位に輝いている。

 そしてムルティストラーダは、初代1200デビュー時の2009年EICMAで映えある「最も美しいバイク」を受賞している。各メーカーのフラッグシップ的なスーパースポーツやハイパーネイキッドが歴代の受賞車に多いこの賞で、ツアラーに属するムルティストラーダが世界中の人々の審美眼にかない、栄冠を勝ち取ったことは当時非常に大きなエポックだった。 

 ムルティストラーダ1200の登場以前、ツアラーに分類されるモーターサイクルは旅の道具としての実用性を磨き上げることに腐心して開発されるのが常であり、スタイリングの美しさについては二の次扱いされることが多かった。とりわけ大型アドベンチャーに属するモデルは機能美のみを高く評価する傾向が強く、姿形の美しさを問う者は少なかったのである。 

 ムルティストラーダ1200の「最も美しいバイク」受賞は、ツアラーは無骨な姿であってもかまわないという、それまでの業界のトレンドを一掃するほどのインパクトがあった。ムルティストラーダ1200の受賞理由は、洗練されたスタイリングだけが評価されただけではない。その美しいフォルムのなかに、ツアラーに求められる機能すべてが過不足なく収められているという、ドゥカティの高次元なデザインの力が評価されての受賞だったといえる。ムルティストラーダはFFF(フォーム・フォローズ・ファンクション)という、「機能美」の原理原則から外れないツアラーなのである。

 旅の良し悪しを語るときに、"誰と行くか"を重要な要素としてあげる旅好きな人は多い。同行者の美しさが旅の良し悪しを決めるわけではないのは当たり前のことだが、美しい旅の道連れが、旅情に高揚感をもたらしてくれることには違いない。最も美しいツアラーという称号を与えられた1200から、基本フォルムを変えることなくスタイリングのブラッシュアップを受け続けてきたムルティストラーダ・シリーズは、一緒にいることが誇らしく思える、旅のパートナーになってくれるだろう。

無限のポテンシャルを、万人が扱えることを可能とした至高のツアラー

 究極のモーターサイクルと呼んでも差し支えないムルティストラーダ・シリーズは、現在日本市場に6機種がラインアップされている。

 最もベーシックなのは950だが、ライディングモード、ボッシュ製コーナリングABS、DTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)、坂道発進時に便利なVHC(ビークル・ホールド・コントロール)、そしてウインカー・オートキャンセルなどの機能を標準で装備。最も安価ながら、ムルティストラーダの魅力を十分に楽しめるパッケージがその魅力だ。 

 950Sは上記の950標準機能に加え、DCL(ドゥカティ・コーナリング・ライト)、セミアクティブ式DSS EVO、DQS(ドゥカティ・クイックシフター)、クルーズ・コントロール、ハンズフリー・システム、バックライト付きハンドルバー・スイッチ、5インチTFTカラー液晶ディスプレイ、フルLEDヘッドライトと機能及び装備を充実させた上級モデルとなっている。

 1260系はスタンダードモデルの1260と上級モデルの1260Sに加え、パイクスピークおよびエンデューロという特別仕様のモデルをラインアップ。パイクスピークは、1916年初開催という長い歴史を持つアメリカのヒルクライムレースの名前を冠しており、2008年からのドゥカティのパイクスピークにおける輝かしい業績(計7勝)を讃えるモデルだ。テルミニョーニ製エキゾーストや各種カーボンパーツを奢るパイクスピークは、最強ヒルクライムマシンとしての、ムルティストラーダの実力を満喫したい人には、最も魅力的なバリエーションであろう。

 1260エンデューロもその名が示すとおり、ムルティストラーダの大型アドベンチャーとしての個性に特化したバージョンだ。未舗装路での使用にマッチした、スポークホイールを前後に採用。可変バルブタイミング式のテスタストレッタDVT・Vツインエンジンのハイパワーを、臆することなく使えるように各種電子制御がアシストしてくれる。

 大型アドベンチャーのカテゴリーとして見た場合、158psの最高出力を叩き出す1260系は最もハイパワーなモデルだ。しかし、ムルティストラーダ1260系の魅力は、この高性能を誰もが扱えるような工夫が、随所に施されているところにある。その最たるものは先述の、4つのライディングモードやドゥカティ・トラクション・コントロールなどの電子制御技術の力だが、そのほかにも軽量コンパクトにまとめられた車体や、人間工学に基づいたエルゴノミクス設計のインターフェースなど、ドゥカティの技術の「美」は細部に宿っている。

 多くの人は大型アドベンチャーにまたがったとき、その燃料タンクなどのボリューム感に威圧感を覚えたり、高めのシート高ゆえの「足がしっかり地面に着かないこと」に対する不安を感じたりするものだ。だがムルティストラーダにまたがった人は誰もが、燃料タンクまわりとシート、そして足を沿える車体側面のスリムさというデザインの絶妙さにより、一般的な大型アドベンチャーモデルよりも両足を楽に地面に下ろすことが可能になっていることに気付くであろう。

 ムルティストラーダ・シリーズは、道無き道を使っての世界一周旅行ができるほどのアドベンチャーモデルとしてのポテンシャルを備えている。しかし、ムルティストラーダの1番の魅力はその比類なき万能ツアラーとしての能力の高さを、誰もが気兼ねなく、日常の中で満喫することができる点にある。大陸に比べれば小さな島国である日本での、日帰りや1泊2日のショートトリップでも、ムルティストラーダと旅立てばそれは上質な非日常を味わえる体験となるだろう。つまり万人が楽しめる至高のツアラーであるムルティストラーダは、人生に彩りを与えるモーターサイクルなのだ。

Born to travel:トラベルマガジン

様々な場所に出かけたい、本能の赴くまま旅をしたいといったライダーに捧げる新しくてエキサイティングな冒険の旅。

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