イタリアの夏の旅日記

ムルティストラーダV4グランドツアーと共に

バイクの旅は、走行距離だけが重要なのではなく、記憶に残った瞬間も大切な要素となる。夏のイタリアには、イタリアならではの独特のリズムがある。

朝の光が村を照らす様子、まだ閉ざされた雨戸、港で静かに揺れる船の中に、私たちはその瞬間を見ることができる。バーが開店する時の食器の音、路地の狭い影、そして海岸線を離れて丘を上がるにつれて変化する空気。

詳細旅には必ずしも必要でない、些細なもの。
しかし、時として、これこそが生涯の記憶に残るものなのだ。

ムルティストラーダV4グランドツアーで、私たちはイタリアの夏を過ごし、あることを探し求めた。それは目的地ではなく、旅先で起こるすべての出来事だ。
私たちが立ち止まっても、美しさは消えることはない

旅とは前進することだが、必ずしも急ぐことを意味するわけではない。全く逆のことが求められる場所もあるのだ。

バイクから降りて、ヘルメットを脱いで、ほんの数分間、周囲の様子を眺める。港がゆっくりと活気を取り戻していく。静かな朝の海。まだ低い位置にある太陽の光を浴びて、向かい合う家々。こうした場面にこそ、新しい旅の本質があるのだ。

その瞬間、道はただ進むべき道ではなく、私たちをここまで導いてくれた旅そのものになる。屋外のテーブル。そこに置かれたコーヒー。帰港する船。誰かが窓を開けている。

特に変わったことはない日常。しかし、それこそがこの場所を特別なものにしているのだ。

夏は、時間の流れ方が違って感じられる。日が長くなり、影がよりはっきりと現れるようになる。広場には人が集まらず、玄関のドアは開け放たれている。バルコニーでは洗濯物がほとんど揺れることなく、小さな港では船がのんびりと停泊している。午後の暑さで日陰で休みたくなる日もあれば、海岸沿いの道を走るだけで空気が変わるのを感じられる日もある。ムルティストラーダV4グランドツアーは、すぐそばで静かに佇んでおり、いつでも出発できる状態だが、出発を促すことはない。このバイクは、この体験に欠かせない一部となっている。五感を駆使して、あらゆる場所を探索し、あらゆる道のりを体験する、もっとも直接的で、強烈で、正しい方法。

立ち止まることも旅の一部。

道が景色を変える

私たちは再び出発した。海は曲がり角の向こうで消えていく。青は緑へと変わり、木々の間から光が差し込む。これはツーリングのもっともシンプルな楽しみの一つだ。窓越しではなく、景色の中に身を浸しながら、移り変わる風景を眺めること。

空気が冷たくなる。緑の香りが辺り一面に漂っている。道は山の地形に沿って曲がりくねり、しばらくの間は道路と周囲の景色以外は何も見えない。

ムルティストラーダV4グランドツアーは、こうした風景を自然に駆け抜け、周囲の環境が走行ペースを決定する。時には速く。時には遅く。時には、何かを発見して引き返すことができるほど、ゆっくりと進むこともある。 

地図には、私たちが選ぶ道がある。また、単に何かを発見できるのではという理由だけで選ぶ道もある。トスカーナの丘陵地帯では、道は地形に沿って現れたり消えたりする。太陽に照らされた野原を駆け抜け、糸杉の林へと登り、人里離れた家屋の脇を通り過ぎ、丘の向こう側へと消えていく。遠くから見ると、モーターサイクルと道路は、まるで風景の中に描かれた二つの筆跡のように見える。

ここでは、それが具体的にどこへ繋がるのかを知る必要はない。今回は、ただそれに従うだけで十分だ。 

なぜなら、旅とは私たちが訪れることに決めた場所にたどり着くことだけが目的ではないからだ。
それはまた、私たちが立ち寄る計画がなかった場所で起こるストーリーでもある。

私たちが見るもの

半開きになったドア。バルコニーに飾られたゼラニウム。並んでいるレモンの木。日陰の通りのひんやりとした石畳。

水辺を見渡せる小さなレストラン。昼食をとっている最中に、船が通り過ぎる。

どの場所にも、色彩、音、素材、ジェスチャーといった独自の言語が存在する。それを真に理解するには、時間が必要だ。そして、おそらくこれこそが旅の最大の特権の一つだろう。つまり、じっくりと時間をかけて景色を眺めることができるということだ。私たちが見ようとした景色だけでなく、その景色の中や周辺に生息するすべてのものも対象とする。それは、地図上には載っていない風景。

しかし、結局のところ、その風景こそがその場所の真の姿なのだ。

そして、私たちが再びモーターサイクルに乗るたびに、世界はまたもや猛スピードで過ぎ去っていく。目の前に道が開け、森を抜け、水辺に沿って進み、遠くから見ると丘の上の石ころの塊にしか見えなかった町へと登っていく。

そして、またコーナーが現れる。そして、その曲がり角の向こうには、一体何が待ち受けているのだろうか?これこそが、旅を単に場所から場所へ移動するだけの行為と区別する点である。これから何が起こるか正確には分からないけれど、前に進み続けることができると分かっている。

ムルティストラーダV4グランドツアーは、出発前に想像していたものと、旅の途中で実際に出会うものとの間の、まさにこの空間を体験するために生まれたバイクだ。私たちが立ち止まった時、それはひっそりと存在感を放つ。

旅を続ける準備ができたとき、あなたをさらに先へと導いてくれるパートナー。また曲がり角があり、また別の感情が湧き上がる 

夕方になる

光が変わり始める。夕日が建物のファサードに沈むにつれ、水面は家々の色を映し出し、広場には影が長く伸びていく。

ようやく気温が下がってきた。

村々は再び賑わいを取り戻し、食卓には料理が並べられ、船は港へと戻っていく。

旅の速度も遅くなったように感じられる。私たちのヘルメットは、しばらくそこに置いておける。私たちのジャケットは、椅子の上に置いてある。そしてバイクは、そこに佇んでいる。 

明日にはまた別の道が開けるだろう。しかし、現時点ではどの道を選ぶべきかを知る必要はない。

旅行の終わりに、そのすべてを覚えていることはめったにない。道が消えてしまうこともある。走行距離もよく覚えていない。地名さえも、少し曖昧になることがある。記憶に残っているのは、驚くほど細かい事だ。水面に映る光。早朝の広場の喧騒。アスファルトに映る木の影。家の色。湖を見渡せるテーブル。遠くから見つけた道と、それがどこへ続いているのかを知りたいという好奇心。

おそらく、私たちが旅をする理由は、探していなかった瞬間を発見するためなのだろう。
そして、次に何が起ころうとも、それを受け入れることができる自由を常に持ち続けることが大切なのだ。

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