- 110 ps 最高出力
- 9.4 kgm 最大トルク
- 210 kg 装備重量(燃料を除く)
Ducatiと赤は切り離せない組み合わせです。しかし、この結びつきは偶然に生まれたものではありません。歴史的に、赤はモータースポーツにおいてイタリアを象徴する色でした。その伝統は1920年代にまでさかのぼります。当時、FIA(当時はAIACR)が各国に固有のレーシングカラーを割り当て、フランスには青、イギリスには緑、ドイツにはシルバー、そしてイタリアには赤が与えられました。時を経て、この色は国の誇り、情熱、スピードの象徴となりました。そしてDucatiにとって、それはさらに大きな意味を持つものとなっています。
とはいえ、Ducatiが最初から赤をブランドの象徴として採用していたわけではありません。初期の数十年において、Ducatiのモーターサイクルはグレー、ライトブルー、ダークブルーなど、さまざまなカラーで製造されていました。レースの世界でも赤は使われていましたが、それは現在Ducatiの代名詞となっている鮮やかなRosso Corsaとは異なり、深いバーガンディに近い色合いでした。まだ明確に定まっていなかったこのカラーアイデンティティは、自らの個性と存在意義を見出そうとしていた当時のDucatiの姿を映し出していました。
大きな転換点は、1980年代に訪れました。その時期、Ducatiは自らのポジショニングを見つめ直し、イタリアらしさとスポーツスピリットを表現できる明確なアイデンティティを模索していました。その中でDucatiは、赤こそがブランドの魂を最も的確に表す色であると認識します。それは、世界中でDucatiの存在を一目で印象づける選択となりました。この瞬間から、赤はブランドを象徴する色となり、Ducatiらしさと唯一性を示す存在になったのです。
Ducati Redを本格的に採用した最初の市販モーターサイクルは、現在ボルゴ・パニガーレのミュージアムに展示されているDucati Pasoでした。しかしPasoは、単なる赤いモーターサイクルではありません。Massimo Tamburiniが手がけた初めてのDucatiであり、真のデザイナーによって生み出された最初のモデルでもありました。つまり、Ducati Redの採用は単なる美的な選択ではなく、Ducatiという企業が自らのアイデンティティを明確に自覚し始めたことを示すものだったのです。
Pasoは、さまざまな意味で革新的なモデルでした。フルフェアリングをまとい、クルマから着想を得たようなデザイン、塗装されたプレキシガラス、フェアリングに一体化されたミラー内蔵ウインカー、そしてそれまでにない細部へのこだわり。赤は、ここで新しい表現言語の一部となりました。もはや単なる色ではなく、明確で認識しやすいアイデンティティを象徴する存在となったのです。
Ducati Redは、時を経ても変わることはありません。私たちにとって色とは、単なる美的な選択ではなく、ひとつの意思表示です。認識されることは、非常に重要です。Ducatiは、グラフィックやロゴがなくても、たったひとつの色で識別できる、世界でも数少ないブランドのひとつです。赤いモーターサイクルを見た子どもが、「あれはDucatiだ」と言う。この瞬時の認知こそ、一貫性と意図ある選択によって築き上げられた、かけがえのない価値なのです。
モータースポーツ
モータースポーツにおいて、Ducati Redはさらに複雑な歩みをたどってきました。MotoGPでは長年にわたり、スポンサーやテレビ放映上の要件によって色が左右され、より明るい赤の色調や白い要素が加えられてきました。しかし2022年、私たちは重要な決断を下しました。Desmosedici GPにDucati Redを取り戻すことです。それは単なる美的な変更ではなく、一貫性を貫くための選択でした。DucatiとDucati Corseはひとつである、という意思表示でもあります。
ひとつの選択
Ducati Centro Stileは、モーターサイクルからビジュアルコミュニケーション、マーチャンダイジングに至るまで、ブランドデザインのあらゆる側面を監修してきました。最後に残されていたのは、レーシングバイクにもこの包括的なDucatiのデザインビジョンを反映させることでした。スポンサー要件やテレビでの視認性には非常に厳しい制約があるため、決して簡単な取り組みではありませんでした。
しかし、今やDucatiのアイデンティティに欠かせないものとなっている視覚的な一貫性を守るために、必要な一歩だったのです。
Pantoneとのパートナーシップ
今回のPantoneとのコラボレーションは、明確な技術的ニーズから始まりました。それは、あらゆる素材においてDucati Redの色の一貫性を高めることです。私たちはPantoneとともに、実測に基づくアプローチで取り組みました。分光測色計を使ってフェアリングの色を測定し、33種類のDucati製品で比較を行ったのです。その結果、製品ごとに大きな差があることが明らかになり、より高い統一性が必要であることが分かりました。
そこで私たちは、標準のカラーライブラリーには含まれない、Ducati専用のカスタムPantoneを開発しました。Pantoneは紙、プラスチック、コットン、塗装面それぞれのサンプルを作成し、素材が変わってもDucati Redが常に同じ印象で表現されるよう、各フォーミュラを調整しました。
アイデンティティと精度
この取り組みで最も興味深いのは、最終的に、Ducati Redを定義するにはフォーミュラだけでは十分ではないということです。それは、デザインブリーフだけでDucatiを構想し、生み出すことができないのと同じです。このプロジェクトに取り組む中で、私は驚くべきことに気づきました。正しい化学組成がそろっているだけでは不十分なのです。
すべての要素が正しくそろっていても、最終的な仕上がりは感覚に、つまり色をどう感じるかという情緒的な知覚に左右されます。それはDucatiを象徴する完璧なメタファーでもあります。Ducatiを唯一無二の存在にしているのは、個々の選択の積み重ねだけではありません。見た瞬間、走らせた瞬間、あるいはその音が目の前を駆け抜けた瞬間に生まれる感情こそが、Ducatiを特別なものにしているのです。
ボルゴ・パニガーレの100年を祝うために、Ducatiは最も象徴的なカラーに新たな解釈を加えました。それが、Rosso Centenarioです。
Superleggera V4 Centenarioのために開発されたGP26 Rosso Centenarioリバリーは、レーシングヘリテージと現代的なビジョンが交わる場所に生まれました。MotoGPのビジュアル言語からインスピレーションを得た赤のシグネチャーは、Ducatiの100年の歴史を映し出しながら、レースの未来へとつながる存在です。
わずか500台のみの限定生産となるSuperleggera V4 Centenarioは、赤をさらに強いアイデンティティの表現へと昇華させます。それは単なる色ではなく、帰属意識、パフォーマンス、そして特別感を象徴するもの。まさに唯一無二の存在として記憶される、ビジュアルシグネチャーです。
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