ルイジ・ダッリーニャ

ドゥカティ史上最も成功を収めたシーズン。その礎となったのは、絶え間ない改善と継続的なイノベーションを追求してきた歩みです。研究開発への飽くなき探究心、情熱、そして創造性。ドゥカティらしいスタイルで積み重ねられてきたその挑戦の軌跡を、ドゥカティ・コルセ ゼネラルマネージャーのルイジ・ダッリーニャが語ります。

ドゥカティ・コルセにとって歴史的な2022年シーズンを象徴するのは、MotoGP最終戦バレンシアでペッコ・バニャイアがMotoGP史上屈指の大逆転劇を成し遂げた瞬間、そしてアルバロ・バウティスタがWorldSBK王座獲得を決定づけたインドネシアラウンドでしょう。ドゥカティ・コルセのゼネラルマネージャー、ルイジ・ダッリーニャのもと、チーム全体が技術革新とテクノロジーの進化を絶えず追求し続けたことで実現した、継続的な成長の軌跡だったのです。

――これらの成功は、多くの要素と多くの人々の力が結実した結果だと言えるのでしょうか。

そう言えると思います。2022年は、私たちが長年にわたって築き上げてきたものが、ついに実を結んだ年でした。その歩みは、2015年に登場したデスモセディチGP15から始まったと言えるでしょう。あのマシンは革新的な存在であり、エンジンだけでなく、従来のドゥカティとは大きく異なるコンセプトを持っていました。そして2016年に初勝利を挙げ、2017年にはアンドレア・ドヴィツィオーゾとともに最終戦までタイトル争いを繰り広げました。そこから私たちは、シーズンごとに、そして革新を積み重ねるたびに成長を続けてきました。特に、誰も成し遂げたことのない取り組みとして、技術開発とスポーツ面の強化を同時に進めてきたのです。現在、ドゥカティでレースを戦うライダーたちは、全員がMotoGPキャリアをドゥカティとともにスタートさせています。彼らは私たちとともに成長し、そして私たちもまた、彼らとともに成長してきました。

――他メーカーにとってのベンチマークになるには、どうすればよいのでしょうか。誰よりも早く到達することなのか、それとも他者には見えていないものを見ることなのでしょうか。

パイオニアであることは、私たちのDNAの一部だと思います。私たちは2014年に、すでに常識を打ち破り始めていました。ファクトリーチームとして唯一、独自ソフトウェアではなく共通ソフトウェアを使用する「オープン」プロジェクトを採用したのです。近年も、私たちはいくつもの重要な革新を生み出してきました。車高調整デバイス、新しい発想による空力ウイング、いわゆる「スプーン」をはじめ、数多くの技術を導入してきたチームでもあります。

――こうした革新は、メイド・イン・イタリーを象徴する要素、つまり創造性の表れだと見る人も多くいます。

ドゥカティには確かに、他国のメーカーには文化的に持ち得ないような“ひらめき”があると思います。ただし、レギュレーションもまた、解釈するために存在しています。創造性があれば、規則で認められている範囲のぎりぎりまで踏み込むソリューションを見つけることができます。なぜなら、その限界に近づくほど、より大きなパフォーマンス向上を得られるからです。長年にわたり、私たちはその一線を決して越えないことに非常に長けてきました。実際、これまで受けてきたすべての技術検査も、問題なく通過しています。

――現在、グリッド上にこれほど多くのドゥカティが並んでいることも、この継続的なイノベーションの成果なのでしょうか。

サテライトチームは、どのメーカーのマシンを使用するかを自由に選ぶことができます。その中で彼らがドゥカティを選ぶのは、競争力のあるマシンを手にできるだけでなく、長期的な開発プログラムの一員として積極的に関わることができると理解しているからです。これもまた、綿密に計画された戦略の成果と言えるでしょう。私たちにとってサテライトチームは、経済的な観点だけでなく、技術的な観点からも極めて重要な存在です。より多くのデータや情報を得ることで、マシン開発をさらに前進させることができます。そしてスポーツ面においても、若いライダーへ投資し、その才能や可能性を真に見極める機会を与えてくれます。

――この点でもドゥカティは、既成の流れに逆らい、「自らライダーを育てる」という道を選んだように見えます。

私たちは、すでに確立された実績を持つライダーに頼るのではなく、若い才能を見出し、その成長を長期的に支えていくことを選びました。その決断は、あらゆる面で成功だったと言えます。まず何よりも、彼らは私たちに大きな喜びと成果をもたらしてくれています。そしてもうひとつは、ドゥカティというブランドそのものをさらに強くしてくれたことです。将来を担うライダーたちからの信頼を獲得できたのです。彼らは、ドゥカティが自分を成長させ、さらに高みへ導いてくれる理想的な環境を提供してくれることを知っています。そうした保証を与えられるメーカーは、決して多くありません。

――チームについてはいかがでしょうか。ドゥカティ・コルセは非常に結束力の高い集団に見えます。

チームこそ、最も大切にしなければならない要素です。なぜなら、結果というものは常にチーム全員の努力によって生み出されるものだからです。私は長年の経験を通じて、勝利は人々が幸せであってこそ手にできるものだと学びました。世界選手権でタイトルを獲得することは極めて困難です。そして、お互いへの信頼がなければ、それを成し遂げることは不可能でしょう。周囲の人々の強みと弱みを理解することが重要です。そうすることで、それぞれの強みを最大限に引き出し、弱みの影響を最小限に抑えることができるのです。

――近年のタイトル獲得に至るまでには、当然ながら苦しい時期もあったと思います。最も困難だった瞬間は何だったのでしょうか。

困難な時期というのは、常に存在するものです。しかし大切なのは、自分自身への信頼を決して失わないことです。結局のところ、人生は勝つことよりも負けることのほうが多いものですから。私たちにとって、マルク・マルケスジョナサン・レイのようなライダーと戦えたことは、成長の機会でもありました。彼らの存在があったからこそ、私たちはより高いレベルを目指し、さらに努力し続けることができたのです。そして間違いなく、アンドレア・ドヴィツィオーゾとの関係に終止符を打ったことは、とても特別な出来事でした。それは双方の合意による決断でしたが、それでもなお辛いものでした。特に感情的な面ではそうでした。なぜなら、私たちは機械ではなく人間だからです。そのことを決して忘れてはならないと思います。

 ――転機となった瞬間はありましたか。物事がようやく正しい方向へ動き始めたと感じたのはいつでしょうか。

MotoGPでは、それはシルバーストンでした。それまでのペッコ・バニャイアは、常にコース上で最速だったからこそ勝利していました。しかしシルバーストンでは、彼は最速のライダーではありませんでした。それでもレースの中で、どんな状況でも勝利をつかむために必要な決意、冷静さ、そしてレースマネジメント能力を示したのです。

一方、スーパーバイクでは、私はかなり早い段階から「今年はいける」と感じていました。私はアルバロ・バウティスタのことをよく知っていますが、彼のレースへの向き合い方は2019年とはまったく違っていました。接近戦やオーバーテイクの場面でより注意深くなり、ライバルとの駆け引きをこれまで以上に緻密に管理するようになっていたのです。そして何よりも大きかったのは、彼がキャリアで初めて「圧倒的に勝ちたい」のではなく、「勝ちたい」と考えるようになったことです。一見するとわずかな違いに思えるかもしれません。しかし、その差こそが決定的だったのです。

――勝つことは難しく、成功を繰り返すことはさらに難しいと言われます。このようなシーズンの後、どのようにして高いモチベーションを維持するのでしょうか。

まず大切なのは、その成功を楽しむことです。勝利は祝福されるべきものだからです。クリスマス前にも、私はチームにレースをもう一度見返すよう伝えました。自分たちが成し遂げたことを、心から実感してほしかったのです。そして今、私たちは勝つことがどれほど素晴らしい気持ちなのかを知っています。だからこそ、その感覚をこれからも味わい続けたいと思っています。もちろん簡単なことではありません。競争のレベルは非常に高く、強力なライダーも数多くいるからです。

――新シーズンに向けて、特別な願いはありますか。

すべての人が、自分の持てる力を最大限に発揮できることを願っています。今のパドックには、特別な空気があります。そしてそれは、ライダーたちのおかげです。彼らは非常に才能豊かであると同時に、スポーツマンシップにも優れています。ドゥカティ・コルセのゼネラルマネージャーである以前に、ひとりのスポーツに携わる人間として、彼らのような人々と仕事ができることを嬉しく、そして誇りに思っています。

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